作 る!小さな天体望遠鏡
vol.3 望遠鏡本体をつくる
口径100mmの理 由
観望用のお気軽望遠鏡と して月から星雲まで、そこそこ見えるように、 口径100mmの短焦点屈折式 としました。
市販の入門機の口径は60mmくらいですが,光害が進んだ今の環境では、星雲星団を見るには 集光 力が物足りないと思います。
かといって、ひたすら口径が大きければ良いかというと、分解能、集光力の増大と引き換えに大きく重くなっ ていきます。
どこかで現実的な妥協点を 定めなくてはなりません。
現在、マニア向け機材では 口径100mmの 短焦点の屈折式望遠鏡が人気で、その高性能な対物レンズを以前より安く入手できます。
それを越えると急に高くなります。
金に糸目をつけない自分だけの逸品を作るのなら口径の大きいレンズでも構いませんが、この連載の趣旨は、ひとつの新しい望遠鏡スタイルの提案でもありま すから、コスト度外視というわけにもいきません。
本音はわたしが貧乏なのだけ?(‾_‾;)
反射式にすれば安く出来るので,HE01で は 短焦点の主鏡を採用してみました。
すると,コマ収差をはじめとした光学的な制約が無視出来ないと実感しました。
そこで、今回は屈折式を試してみることに します。
入手しやすい価格の上限ということで、口径100mmとしました。
広視界を得る
この口径100mmには、第2回の構想で掲げた、「広い視 界」を得るためにも適当であるいえます。
なぜ口径が視界の広さと関係あるのでしょう?
それは、有効最低倍率が、人間のひとみの径で決められてしまうからです。
みかけ視界50度程度の接眼鏡が入手しやすい価格ですので、仮にそれを使用するとしましょう。
どのように我々は赤方偏移を使用していますか:
観望用には視界の広いRFT(Rich Field Telescopeの略)的な性格が欠かせないと思います。
RFTというからには、2度以上の実視界はほしくなります。
有効最低倍率をひとみ径5mmの時とすると、口径100mmの望遠鏡では、次に示すようにRFTとしての条件を持っています。
有効最低倍率=口径100mm÷ひとみ径 5mm=20倍
実視界=2×tan-1(tan (50度÷2)÷20倍))=2.7度
(補足)
大口径であっても高価な長焦点の広視界接眼鏡を使用して倍率を下げればある程 度、実視界を広くすることは 出来ます。
しかし、ひとみ径が5mmを越えるあたりから、バックグラ ウンドが明るくなり、星雲のように淡く広 がった天体はその中に埋もれてしまうことがあります。
RFTとして考えたとき、小口径100mmにも良いところがあると思う理由です。
光学レイアウト
普通の屈折式のような直視型の望遠鏡で空を見上げると首が痛くなります。
そこで対物と接眼に傾斜角をつけることにしますが、90度では前方を見ている感覚が乏しくなるので、45度と します。
市販されている対空双眼鏡などでは、接眼レンズの直前にミラーやプリズムを入れて、角度をつけています。
今回は、接眼部を目の高さまで持ち上げる予定なので、それでは重心が高くなってしまい、バランス的に不安です。
そこで考えた光路図を図1に示しました。
図 1.光路図
2枚の平面鏡で光路をコンパクトなZ形に曲げ、接眼をのぞきやすい45度の角度にしつつ、重心に近くしました。
こうすれば架台の安定にいくらか寄与すると考えたのです。
対物レンズ、平面鏡の各々には、光軸修正装置をつけます。
望遠鏡の仕様
から作られた灰秋の化石は何ですか?
- 対物レンズ:口径100mmf640mmアクロマートレンズ (ボーグ製)
- 第1平面鏡:短径70mm(笠井トレーディング製 ニュートン式反射用斜鏡)
- 第2平面鏡:短径42mm(ミザール製 ニュートン式反射用斜鏡)
ところで、屈折式に2枚の平面鏡を入れる、フォールディング型(Folding)などと呼ばれる方式は、様々なレイアウトを作り出す 事が出 来ます。
実際に実用化されている例を調べて、図2に示しました。
図 2.フォールディング屈折式の例
Aは、 コンパクト化が目的で、過去に市販された物もいくつかありました。
Bは、 接眼が90度横に出ますのでニュートン式反射のように使えま す。
Cは、 対空型の彗星捜索機として作られたかなり昔の自作例で、ここで 作る物に似ています。
いずれも、中間の2枚の平面鏡はあくまでも、使い勝手を考慮して入れるものです。
光学性能上はプラスにはならず、反射面での光量損失、コントラ ストの低下などを引き起すことは覚悟しなくてはなりません。
使う鏡は、特注では高いので、反射用の斜鏡(量産品)としますから、果たしてどのくらい影響が出るのかちょっと不安を覚えました。
光軸の出し方も書物などにはありません。
設計、加工
光路図1をもとに、光学部品を支える構造物を設計し、部品化します。
この折れ曲がった光路だと、普通の望遠鏡のように鏡筒を丸い筒で作るのは難しいので、アルミアングルで四角いフレームを組む事を基本にしました。
図3は、鏡体の部品です。
これは反射望遠鏡の作り方に近く、少し部品数が多くなってしまったのが反省すべきところです。
図 3.望遠鏡本体の部品
材料のほとんどが、アルミ板と真鍮板です。
金工糸ノコで切り出し、ドリルで穴をあけました。
真鍮はハンダつけが必要なセル部分に使いましたが、重いわりに強度が低く、アルミで接着にすれば良かったと後悔しています。
本体の完成
これらの部品をM3ネジで組み上げて、出来上がったのが次の図4です。
どのような影響を与える光電効果は、社会でなければならなかった
図4.望遠鏡本体
鏡筒は「筒」というより「箱」のようです。
遮光用に紙のカバーをつけています。(カバーは、仮の物で、あとでちゃんと作り替えるつもりです。)
対物レンズの焦点距離は640mmですが、平面鏡で光路を折り返しているので、全長は400mmで済み、口径100mmの屈折式望遠鏡とは思えない小ささで す。
ただ、質量は 2.6kgと、ちょっと重く、架台 への負担が心配です。
それでも市販品に比べればまだ軽いですが...。
もう一つの大きな工夫として、架台が無くても使えるよ うに、ハ ンドグリップがつい てます。
望遠鏡を手に持って観望できる必要性を感じていたからです。
もちろん、しっかり固定して見たいこともありますから、鏡筒の底部には 1/4"カメラネジがついていて、カメラ三脚にも載せられます。
接眼部もちょっと変わっていて、ドロチューブの外径が2インチになっていて、そこにボーグのSヘリコイドがついています。
通常はアメリカンサイズの接眼鏡を使用します。
地上風景を見るときはドロチューブを抜き取り、かわりにボーグ製の2インチ径正立プリズムをつけると、正立像になります。
この時、ピントは正立プリズムを抜き差しして合わせることになります。
見え味は?
さて、肝心の見え具合です。
接眼鏡LV9をつけて見る倍率71倍では、対物レンズがアクロマートのためか、やはり紫色の 色収差がでますが,土星の輪や木星の縞がなかなか良く見えます。
100倍以下の「お気軽な観望」を する能力はありそうです。
かつて6cmF7のアクロマートレンズで望遠鏡を作った経験がありますが、ボーグのアクロマートレンズは、それよりも色収差が少ないです。
時代遅れの感があるアクロマートレンズも、昔のレンズより進化しているようです。
ボーグでは同スペックのEDアポクロマートレンズも発売されていますから、交換することも容易ですが、この望遠鏡の性格を考えるとちょっとゼ イタ クかと思います。
次にEr32(見かけ視界50度)をつけると、20倍、実視界2.7度のRFTとなり、オリオン座のM42やペ ルセウス座の2重星団など が実に美しく見えました。
手持ちで見られますから、双眼鏡にも似た使い方が出来るのが新しい発見でした。
サイズ的に対等な口径100mmF4.3の短焦点の反射望遠鏡と比較しました。
低倍率では色収差も気にならず視界周辺でのコマ収差も少ないため、低倍率の視界ではこちらの ほうが優れている感じです。
反射は短焦点でも中心部はシャープですから、高倍率では一歩譲ります、
ミラーが2枚も入ったこの屈折は、"ずばぬけた光学性能"とは言いませんが、お気軽な観望用としては、まずまずの 成績のようです。
光軸合わせも思っていたほどには難しくはありませんでした。
(反射の光軸合わせと屈折の光軸合わせを併せ持った感じになります。具 体的な方法はこ ちら)
後日、CG化したもの(09-08-02 追記)
カメラ三脚に取り付けると、45度の傾斜接眼のため、目標が前に見えますから、ねらいもつけやすいの ですが、仰角60度を越えると接眼部の高さが不足して姿勢が苦し くなります。
ふつうの架台の場合は、45度より90度のほうがやはり楽だと再確認した次第です。
次回は、これを解決するための工夫を盛り込んだ架台の製作です。
(1999-1-8掲載)
誠文堂新光社の望遠鏡自作ガイド別冊に架台無抱っこしてみる低倍率反射望遠鏡画載っていました(原典散逸)著者は清原氏(清原光学研究所?)天文ガイド創刊号を持っている世代、池谷関彗星を撮影(中学生)68歳、むしょうに抱っこ型手製シュミットカメラが欲しくなりました。ご教示を SUMI
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